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2008年03月04日

春を待つとまどい 1

「お前なら、きっと気に入ると思っていた」

アイリッシュ・ウィスキーの温かさに身体を包まれながら、くつろぎ微笑んでいる友人を隣に、私はバーテンダーの位置を気にしながら、囁いた。

「今俺がお前に送ることのできる、これがたぶん最高のものだ」

友人は頷く。言うまでもないことをあらためて口に出してしまった気恥ずかしさを感じながら、私はラフロイグを口にした。非常に珍しいことである。Ardbeg の置いてある店で、ラフロイグを頼むことは。

初めての結婚記念日を祝ったメールをきっかけに、その日私は、友人を誘い出していた。

友人は私がこれまでに数えきれないほどのバーを巡っていることを知っている。だから、彼と会うときは、たいてい私が店の候補を提案することになる。

その日もいくつか候補を挙げた上で彼に選んでもらった。携帯メールの送信履歴には、以下のような文章が残った。

A) 件の行きつけの店へ連れて行く。こないだの店の上だ。
B) お前なら絶対気に入るはずのバーがある。マスターは恐らく俺らと同年代。数々行ったバーの中でも、最高水準の素晴らしさ。
C) ラム専門のバーに案内する。
D) ゴールデン街で1軒開拓し、1軒紹介を受けている。君好みではないかもしれないが、興味深い同所の足がかりにはなるかも。

私は彼が B を選ぶであろうことを確信して、送信ボタンを押した。そして彼は、B を選んだ。そして今、私たち2人は双方好みのウィスキーを目の前に、懐かしいジャズを聴きながら、既に長い時間を過ごしていた。

(次回に続く)
posted by 成瀬隆範 at 01:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 文芸・話芸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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