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2008年03月03日

面影はポート・エレンに 5

前回の続き)

私は、滅多に何かをほめることはない。それは、自分の心をつかんで離さないほどの大きな価値を持つものが、なかなか見出せないからである。しかし、私は、自分がそのような価値を見出したと自覚した時には、包み隠さず、その気持ちを表すことにしている。

好きだ、とても素晴らしい、と。

そういった意味では、私は、Ardbeg Very Young と、Ardbeg 17年が好きである。いや、その個性を、愛しているといってもいいくらいである。Ardbeg Very Young はその激しさと荒々しさと、持っている力の強大さ故に。そして、Ardbeg 17年は、その洗練された美しさと、そのように美しくなるまでに経てきた、大いなる年月を連想させるが故に。

ウィスキーの1滴を作るために、どれだけの歴史と労力がそこに費やされているか、私は、公表されている知識としてしか把握してはいない。しかし、いわゆるエネルギー保存の法則を越えて、単なる大麦の化学反応液が、Ardbeg Very Young や Ardbeg 17年として私の心を捉えて離さず、そこに大きな価値を生み出すのであれば、私にとってウィスキーとは、酒とは、それはただ単にスノッブ的な価値感を越えた存在となるのである。

私は、未だに Ardbeg TEN を飲むと、心が躍る。その4年前に通り過ぎたはずの、隠しきれないほどの、強烈さと、力の強大さを感じて。そして、7年後に落ち着くはずの、豊かな経験を元にした、洗練された美しさを感じて。

面影は、ポート・エレンに。もう二度と、会えないわけではないのだと、そう思いながら、私はまたバーを巡ることになる。

(終)
posted by 成瀬隆範 at 00:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 文芸・話芸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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