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2008年02月24日

面影はポート・エレンに 2

前回の続き

目は、カウンターの中を追う。1杯目の酒は、2杯目を探すための時間稼ぎのようなものだ。バーには時間を過ごすために来る。急ぐ必要は全くない。じっくりと探せばよい。そうでなければ、たいていは向こうから、何か薦めてくれるものだ。

ふと、バックバーの一番上の棚に目が止まる。一番上、ということは、それほど使う頻度の高い酒ではないだろう。そして、使用頻度の高さは、価格とは比例しないものなのだ。トリニティ、ビッグスモーク、そして、ポート・エレン。

ポート・エレン。今まで1回しか飲んだことがないし、この先、飲む機会があるかどうかなんて、全く未知数の酒だ。なにせ、1983年に操業停止をしている蒸留所だ。今から25年前。

最初にこの酒を飲んだのは、池袋のとある店だった。バーというよりは、若者向けの小洒落たダイニングバーに、それはあった。カウンターで酒を飲み、食事をしていると、チーフの料理人が話しかけてきた。

池袋も、相当バーを巡った。そんな話をしながら、一番好きなのがアイラモルトであることを、ふと明かすこととなった。料理人はそれを聞くと、カウンター奥の調理場に乱立する瓶の中から、おもむろにひとつの瓶を取り出してきた。

それが、ポート・エレンだった。たぶんボトラーズものだったと思うが、詳しくは覚えていない。瓶の底の方に、ほんの1杯分に満たないほど残っている、琥珀色の液体。

飲みますか、と、聞いてくる。飲みたくないわけがない。滅多に見かけない。初めての体験だ。私は、覚悟を決めた。ポート・エレン。今日は、2軒目はないな、と。

モルトグラスが目の前に置かれ、ポート・エレンが、瓶の中から注がれた。

全て。

瓶の中は、空になっていた。

次回へ続く
posted by 成瀬隆範 at 01:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 文芸・話芸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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