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2007年12月07日

Who's What A Girl? 3

前回からの続き)

秩父 8年。もちろん、知っているはずが無い。私は国産ウィスキーには特に疎く、かといって、その他のウィスキーに詳しいわけでもない。ただ Ardbeg を好きになってしまったから、Ardbeg を中心に飲んできただけであり、その他のウィスキーももちろん飲んだことはあるが、それはただ単に気が向いたからに過ぎない。

私は元来、知識を重要視しない方だ。知識はただのデータであり、データはそれを活かす発想力や感性があって、初めて価値を持つものだ。特に、知識(データ)がインターネットという形で、既に「外部記憶化」してしまっている今の時代となっては、ただ単に「知っている」ことは、大して意味をなさないのだ。

さて秩父 8年。飲んでみて、ふーんなるほど、と思った。ただ、ふーんなるほど、な味であって、自分にとっては、Ardbeg が好きになったような惚れ方をするようなものではなかったのは事実だ。

メニューを見て、確認する。秩父 8年。ニッカでもサントリーでもなかった。東亜酒造。もちろん、自分は知らない酒造会社である。

もう1杯、マスターのお見立てで頼んでみた。

「Ichiro 2000 です。」


Ichiro。イチロー。先ほどメニューを見た時に、東亜酒造の下にリストアップされていたものだった。まさか、メジャーリーグで活躍しているイチローでもないだろうが……などと、思いながら一口飲んでみた。

……見つけた、なんと、2杯目で。

Ardbeg Very Young をもっと抑え気味にしたような感じ。Ardbeg Very Young が京劇の剣舞なら、Ichiro 2000 は、八相に構えた剣豪だろう。物静かに見えて、十分こちらを攻めてくる。

Ichiro は、東亜酒造がなくなる際に廃棄されるはずだった樽詰めのウィスキー原酒を保管しておいて、後年ベンチャーウィスキー社を立ち上げてから商品化したらしい。Ichiro の名は、東亜酒造から独立する形で会社を立ち上げた創業者の名前とのこと。

原始時代ならいざ知らず、現代では、酒の裏には必ず「人」がいる。ものが溢れ過ぎているこの世の中で、「見つけた」と思える瞬間を体験できるのは、非常に大切なことなのだ。

だから、その裏で、自分にとって「大切だ」と思えるものを作り出した人達には、感謝をしなければならない。

「大切だ」と、思えるもの。私はその翌日には、一時的かもしれないとはいえ数日の後に消えようとしている、自分にとっての大切な場所へ、是非もう一度行ってみようと思っていた。
posted by 成瀬隆範 at 00:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 文芸・話芸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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