BAOBAB に入ると、エレキギターのカッティングと、温かな日本語の歌詞が店を満たしていた。
琥珀色の店内の少し奥まった席に通される。独身最後の日を迎える友人に乾杯をする。外で酒を飲むのは、昨年以来。随分久しぶりだ。Bushmills。友人のお気に入り。
彼は日本人らしいリズムと、何よりも日本語の弾き語りを喜んでくれた。目を閉じて揺れる。日本語。単純なリズム。これが本物の黒人のグルーヴなら、彼は目を閉じなかっただろう。
飾らない男。彼の態度はそのままだ。自然な喜び。リラックスしたまま、くだらないことばかり話している。格好つけたってしょうがない。こっちは専ら聞き役だ。
馬鹿みたいに明るくいられた学生時代は随分前に過ぎ去った。区切ることの喜びも不安も一緒に抱えながら、それでも今までは擬似的に共有していた感覚は、彼には明日からなくなってしまう。
そして彼は、新しい感覚を得る。どうやら、馬鹿になるのは容易いことではないらしい。
別れ際。
「お前はやっぱりエンターテイナーだよ」
…ああ、そうだな。スターだなんて恥ずかしい呼び方されてたもんな。明るくもなんともない時代だったけど。それでも漠然と夢を見た気になって、歌ばかり歌って、呆れるほどゆっくり歩いていたもんな。多分、今も大して変わりはしないのだろうけれど。
幸せ。それを、温かく与えられるようになれよ、と。自分が幸せになるのに、それ以上に最高のやり方なんて、存在しないのだろう?
まったく、お互いさまだよな。だからこそ、幸せになれよ。
posted by 成瀬隆範 at 23:21|
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